【熊本地震】「憩いの場」、もう一つの役割
2016.05.24
「いつでも笑顔で迎えてくれるから嬉しい」
「家こわれちゃったし笑うときじゃないかもしれないけど、下を向いとっても仕方ないしね! ここで元気もらってがんばるよ」
A-PADジャパンがパートナー団体(Civic Force/ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)とともに、益城町の2カ所で運営するテント村(益城町総合体育館芝生広場:32世帯・129人・49匹、再春館ヒルトップ:20世帯・61人・30匹)。益城町総合体育館芝生広場のカフェコーナーでは、毎日朝から夕方まで、コーヒーなどの飲み物を提供し、避難者の方同士の交流の場となっています。また、再春館ヒルトップではプレハブを設置し、コミュニティスペースを設けています。
「避難者の皆さんが何か問題を抱えていれば、できるだけ解決していきたい」。そんな思いを持って日々活動している現場スタッフにとって、これらのスペースは実はとても重要な意味があります。
現在、全52世帯が暮らすテントは、いわば避難者の方々のプライベートな空間。運営側であっても、私たちスタッフがいつでも足を踏み入れてよいものではないと考えています。しかし、ジメジメした雨の日や、熱中症が懸念されるほどの暑い日が続く中、避難者の方々の体調や心情の変化を把握しておくことは、運営側の責務でもあります。
そこで、チームは医師や薬剤師、歯科医師、衛生士など専門家チームの協力を得て、定期的にテントを巡回。最近では、DVT(深部静脈血栓症)の予防や熱中症対策の方法などを伝えるとともに、ダニやノミ対策グッズの提供も行いました。また、他の避難所や支援関係者などとのミーティングを通じて得た情報を、テント村の皆さんに伝える取り組みも日々のルーティンワークの一つ。不審者が出るとの情報があった際には警備を強化したり、ムカデが出るとの声が寄せられたらすぐにムカデ忌避剤を配るなど、日々変わるニーズに一つ一つ応えています。
避難者の方々との会話は、震災や被害状況に関する内容のほか、最近では震災前の日常に近い会話が少しずつ増えてきました。
益城町で被災し、現在チームが運営するテントで生活する宮﨑律子さん(64)は、4月17日にテント村に来る前、3匹の犬とともに野宿や車中泊をしていました。理由は、「ペットを連れて避難所の中にいると嫌がられるのではないかと思ったから」。地震が発生してから犬たちが下痢を繰り返していたけれど、ここにきてようやく落ち着き、ゲージの中に入って休むようになったと言います。
「ペットが元気なら私も元気」と話す方も多くいます。チームでは、ヒルトップのテント村にドッグランやペット預かり所のスペースを設け、少しでもストレスなく避難者の方が生活できるよう努めています。