【A-PADインドネシア】“災害に強い観光村”を目指して
2024.01.21
豊かな大自然に恵まれ世界でも有数の観光地が多い一方、地震や津波などの災害が頻発するインドネシアでは、国家防災計画の優先事項として「観光地における防災・減災」を掲げています。しかし、国家レベルでの枠組みの整備はまだ途上にあり、各自治体などが独自に取り組んでいるのが現状です。
そこで、A-PADインドネシアはこれまでの事業で培った経験やネットワークを生かして、「災害に強い観光村ガイドライン」を作成し、その普及を通じて地域の災害レジリエンスを強化する取り組みに力を入れています。
こうした活動の一環で、2023年12月27、28日、西ヌサトゥンガラ州西ロンボク県でガイドライン作成に向けた意見交換会を開催しました。西ヌサトゥンガラ州西ロンボク県の観光村4村( バトゥクンブン村・クランバヤン村・ニュルレンバン村・ サリバエ村)の村長をはじめ、観光局、西ロンボク県地方防災局、西ヌサトゥンガラ州地方防災局、インドネシア観光産業協会、インドネシア赤十字、災害リスク軽減フォーラムの担当者などが参加しました。
27日には、観光村4村の村長がそれぞれの経験を共有し互いに学び合う「観光村アセスメント」を実施しました。
村民対象の災害時訓練などを続けているバトゥクンブン村では、ヘルストレーニングセンターと連携して保健分野の人材育成を強化しているほか、アル・アズハル・イスラム大学と連携協定を締結し災害・防災分野の専門家とともに災害時の行動計画などの策定を進めています。村長は「災害が起きても地域の産業をストップさせないよう、災害後にも収入を得られる仕組みをつくるなど備えをしている」と語りました。
また、クランバヤン村では災害に強いインフラ整備を進めています。
ニュルレンバン村の村長は、コロナ後の漁村復興に苦慮した事例として、加工品の在庫が飽和状態で市場へ売りに出せなくなった経験を挙げ、「平時からサプライチェーンマネジメントを備えるため他の漁村とも連携していきたい」と語りました。
このほか、サリバエ村では西ヌサトゥンガラ州のインドネシア赤十字(PMI)から災害管理の人材強化支援を受けており、村長は「2018年の地震の際、村民の被害がなかったため、災害の備えができていたと勘違いをしたが、実際には偶然、全村民が外にいただけだったことが分かった」と振り返りました。
村協議会(Badan Permusyawaratan Desa: BPD)の会長は、「観光の村として賞をとるほど有名な村があったが、災害をきっかけに観光の村として復活することができなかった」と語り、地域を牽引するリーダーにも大きな役割・責任があることを強調しました。
その後、「地域の災害の歴史」「災害がもたらした影響」「コミュニティの災害管理における役割図」「地域の経済力と福祉」「(特定の観光場所の形状をマップにして災害リスクを知る)スポットマップ」という5つの視点からアセスメントを実施。その結果をもとにガイドライン策定に向けた協議を行いました。そして、今回参加した観光村だけでなく、ほかの村にも同様のコンセプトを導入したり、伝えたりする必要性について話し合いました。
本事業は、外務省の「R5年度日本NGO連携無償資金協力(インドネシア)」の一環として実施しています。